ニュースの概要
DoorDashは、米連邦航空局からPart 135の航空運送人認可を得て、自社でドローンを運航する新事業「DoorDash Air」を始めました。初期展開地域はテキサス州とノースカロライナ州で、食事や日用品をおおむね25分で届ける計画です。これまで同社は外部のドローン事業者との連携を軸にしてきましたが、今回の認可によって、機体の運用、配達品質、顧客データを自社で一体管理する段階へ移ります。米国の商用ドローン配送事業者としては8社目に当たるとされ、実証段階から継続運航と採算性を競う局面に入ったことを示す動きです。
引用元: DoorDash、FAA認可を取得し自社ドローン配送「DoorDash Air」を開始(Commercial UAV News)
分析・見解
配送プラットフォームが「航空事業者の責任」まで担う意味
今回の動きの意味は、DoorDashが新しい配送手段を追加したことだけではない。配送プラットフォーム企業が、航空事業者としての責任まで自社の事業に取り込んだ点にある。FAA(米連邦航空局)のPart 135という認可制度は、機体を飛ばせるという単純な許可ではない。運航の管理、整備、操縦者の管理、事故や異常時の手順、記録の保存などを含む、続けて安全を守る体制を求めるものだ。したがってDoorDash Airの成否は、飛行の性能よりも、注文受付から機体の割り当て、店舗での積み込み、飛行中の監視、玄関先での引き渡しまでを一つの業務として安定させられるかにかかっている。
FAA認可は無条件の広域運航ではない、テキサス・NC選定の狙い
特に重要なのは、Part 135の認可が無条件の広域運航を意味しないことだ。人口密集地域の上空を飛ぶこと、パイロットが目で見ずに飛ばす「目視外飛行」、道路や人の上空を通過すること、夜間の運航などには、別の承認や運用条件がかかわる。テキサス州とノースカロライナ州が初期地域に選ばれたのも、単に市場が大きいからではないだろう。郊外住宅地を含む配送需要があり、拠点を設けやすい土地があり、飛行経路を設計しやすい空間がそろう地域から始める狙いがあると考えられる。都市中心部の混み合った配送より、道路渋滞の影響を受けやすい郊外のほうが、時間短縮の価値を示しやすい。
到着地点の精度と同時運航数が実用化のつまずきどころ
技術面では、機体の航続距離や積める量だけでなく、荷物を届ける地点の精度が実用性を決める。食事は傾きや温度の変化に弱く、日用品は品目によって重さと大きさが大きく異なる。利用者が指定した庭や受け取り場所に安全に荷物を降ろすには、地図の情報、障害物を検知する仕組み、風の予測、通信が途切れないための備えが必要になる。さらに、注文が集中する夕食の時間帯に複数の機体を同時に飛ばせなければ、単発の飛行実演から実際の物流サービスへは進めない。ドローン配送で本当につまずきやすいのは、空を飛ぶこと自体ではなく、例外への対応を含めた運航の組み立てにある。
先行事業者との違いは、空と道路を一つの配車網として扱えるか
WingやZiplineなど、米国で先行する事業者は、機体や運航管理の技術に加えて、店舗側の受け渡し設備や地域ごとの運用の知見を積み上げてきた。DoorDashにはすでに多数の飲食店、消費者、配達注文のデータがある。これは大きな強みだが、同時に自社で運航する難しさも増す。通常の配達員なら車両や道路の事情で遅れても代わりの手段を選べるが、ドローンは風、雨、通信の不調、着陸地点がふさがっていることによって運航を止めざるを得ない場合がある。注文を受けた後に飛べないとわかったとき、地上配送へ切り替える判断を数分以内に行わなければ、かえって顧客の満足度は下がる。
独自の競争軸になるのは、機体の保有数ではなく、空と道路を一つの配車網として扱えるかどうかだろう。ドローンは短距離の小口配送、車両は重い荷物や悪天候時の代わりという役割分担を組み、注文の単価、距離、気象条件、在庫の場所をもとに最適な手段を選ぶ。そうなればDoorDash Airは、単独の空中配送サービスではなく、既存の配送網の一部として価値を持つ。今後は運航地域を広げることよりも、飛行できる注文の比率、再配達や地上への切り替えの割合、1件あたりの監視・整備にかかる費用をどこまで下げられるかが、事業を評価する指標になる。
ビジネスへの影響
25分という目標時間だけで判断してはいけない理由
飲食店や小売企業にとって、DoorDash Airは配達時間を短くする選択肢である一方、すぐに全注文を置き換える仕組みではない。導入を検討する際は、店舗から受け渡し拠点までの動線、商品の重さと容器、離着陸場所の安全性、悪天候時に代わりとなる配送手段を先に確認すべきだ。25分という目標時間だけで判断すると、積み込み待ちや注文の作り直しが起きた場合の実際の所要時間を見落としてしまう。
配送料以外の費用を含めた総額で判断する必要性
企業側が評価する際は、ドローンの配送料だけでなく、店舗の作業にかかる費用、専用設備、保険、地上配送へ切り替える費用を含めた総額を見る必要がある。短距離で注文が多く、道路渋滞による遅れが大きい地域ほど効果は出やすい。反対に、注文が少ない地域で機体や監視の担当者を待機させると、1件あたりの費用は上がってしまう。まずは医薬品、急ぎの食事、切らしたくない日用品など、時間の価値が高く、比較的軽い商品に対象を絞るのが現実的だ。
飛行件数より「運用の再現性」を測るべき理由
意思決定者は、飛行した件数よりも運用の再現性を測るべきである。確認したい指標は、注文から出発までの時間、飛行の成功率、地上配送への切り替え率、商品が壊れた割合、顧客が受け取れなかった割合、監視担当者一人が同時に見られる運航数だ。DoorDashにとっても、他社の運航サービスを使う場合より自社運航の固定費は重くなる。自社の注文データを生かして需要が高い時間帯と地域へ機体を配置し、空路と車両をうまく連動させられるかが、認可の取得を利益に変える分かれ目になる。